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安達としまむら 特典小説2巻【死間】感想

互いに感情を渡し合う女子高生2人の、ちょっと変わった日常を描くアニメ『安達としまむら』(通称あだしま)のBD&DVD第2巻が発売しました。

 

今回は特典小説『死間』の感想についてネタバレありで書いていきたいと思います。

 

 

 

あらすじ

今作も2つのパートに分かれています。

中心となっているのは、しまむら目線で描かれる、20歳になったしまむらの一日の様子です。

母親からの強制膝枕や、偶然出会った日野と、日野の家でまったりと過ごしながら、誕生を祝ってもらいます。

 

一方で、最初と最後を飾るのは、チト目線で描かれる遠い未来の別の星の話です。

旅を続けるチトは、ようやく人間に出会います。

黒い髪のシマという少女です。

ぎこちない2人の出会いが、一体何をもたらすのか、気になるところです。

また、今回もヤシロが2つのパートを繋ぐ存在になっていて、しまむらから誕生日や記念日について学んだヤシロは、チトと出会った日をお祝いします。

 

見どころ

『死間』には、なんと安達が登場しません。

安達ファンには物足りないかと思いきや、誰と過ごしても事あるごとに安達のことを思い浮かべるしまむらが可愛いので、十分に楽しめる内容になっているかと思います!

特に、自分からは誕生日だと言わずに、安達からの連絡を期待して待つしまむらの心情が愛おしいです…。

タイトルが『死間』であるように、しまむらの死生観について触れた内容になっていて、しまむらという人物の掘り下げが見どころです。

 

また、永藤は出てこないのですが、日野の出番が多く、永藤の話ばかりする日野が可愛いので、2人のファンならニヤニヤすること間違いないです!

それでは、具体的に作中で印象的だった場面について語っていきたいと思います。

 

天候の変化が極めて少ないので日付や季節を忘れそうになるけれど、空気の肌触りだけは記憶のどこかにあった。蒸し暑さが肌に宿るこの時期に、わたしはそれを振り払うように上を向いた。

そして、空から舞い降りるものを見た。

安達としまむら『死間』P7より

チトパートの、ヤシロと初めて会った時の回想シーンです。

荒廃した惑星の非現実的な世界観を、寂寥感を伴いながらも鮮やかに描いていて、光景が目に浮かぶようです。

 

カレンダーを覗いて、今日という日に花丸をつける。花弁がなかなかバランス良く描けて、ニ十歳を感じた。出来栄えに満足してから、さぁ何しようと部屋の中をうろうろする。

安達としまむら『死間』P9より

毎年過ぎてから思い出す誕生日を、珍しく当日に思い出すことができ、カレンダーに花丸を描いたり、その場で飛び跳ねる、少し浮かれた様子のしまむらが可愛いです。

祝ってくれる存在ができたからでしょうか…?

安達に関する自意識過剰な独り言は悶えること間違いなしなので要チェックです!

また、安達から連絡が来るかもしれないからと、携帯電話を常に持ち歩くところで、思わず頬が緩んでしまいました。

 

 

「今日は安達ちゃんとお出かけ?」

「今のところは、そういう予定はないけど」

言えば安達は必ずそう提案する。でもなんとなく、気づいてほしくて、待ってる。

もし日付が変わってもなにもなかったら、来年まで忘れてしまおうと思っている。

そして来年もきっとわたしは、安達を待つ。

母親から強制的に膝枕をされている時の会話です。

あのしまむらが、まるで普通の恋する女の子のような乙女チックな思考回路をしていました…。可愛すぎてどうにかなりそうです。

でも、気づいてほしいなんて、いじらしい気持ちを抱えながらも、何もなかったら忘れてしまおうという持ち前の淡白さがしまむららしいですね。

何よりも、来年も安達を求めるだろうと思っているしまむらの破壊力が凄まじいですね…。

これは、後の日野とのシーンを踏まえるとより心に刺さります。

 

「強くなった?」

「強いってなんですか?」

「聞いたことあるんスけどー」

そう言いながら母は一度目を瞑り、口元を緩め、それから顔を上げる。

「強いっていうのは多分、なにかに近づいても怖がらないことだと思うね」

希少な、真面目な母親が誕生日に姿を見せた。差した光を追うように、母を見上げる。

母は未だ小さな子供を見守るように、わたしを優しく見下ろしていた。

安達としまむら『死間』P16より

照れ隠しで茶化し合いながらの親子の会話は少しうるっときます。

母親の子を想う気持ち……いずれは家を出るしまむらとの最後のじゃれ合いの時間とでも錯覚するような寂寥感の中と、包み込む優しい暖かさ。

二十歳。大人になったはずなのに、母の前ではまだ子供のように見えてしまう、しまむら

この空気感は、ぜひとも実際に読んで感じてほしいです!

 

昔の自分と違うものは、確かに今芽生えていて。

で、その安達が来なければ、変わらない町がそこにあるだけだった。

わたしを変えていくのは二十歳なんかじゃなくて安達なのだと改めて理解する。

良くも悪くも、彼女がもたらす波に翻弄されて、わたしは沖へ漕ぎ出るのだ。

安達としまむら『死間』P18より

二十歳になり、自分自身を見つめなおした結果、安達によって変化したと受け止めているしまむらが感慨深いですね…。

しまむらは、安達からの電話を期待する自分のことを、泳がされていると表現します。

アニメでは安達がしまむらに翻弄されている様が目立ちましたが、今では、しまむらも安達に翻弄されてしまうとは…。互いに影響し合っている関係性が尊いですね!

また、連絡がないことに対して、心の中で安達に文句を言うわけではなく「君ならできる」と応援しているのがしまむららしくてかわいかったです。

この辺の心情は動揺や戸惑いなども見え隠れしていて、振り回されているしまむらというレアな状態を拝むことができておすすめです。

 

しまむらは姉力高いけど、母力はまだないみたいだな」

「どっちも初めて聞く日本語だけど」

母力も割とないかなわたし、と安達とのやり取りを思い返す。

安達は母力を発揮すると渋い顔になるけど、姉力には弱い。加減がなかなか難しいのだ。

安達としまむら『死間』P23より

アニメでも、安達はしまむらの妹になりたいと言っていましたが、まだしまむらの姉モードに弱いみたいですね。

翻弄していると思いきや、こういう関係性は健全で可愛らしいですね!

 

「風っていうのは目に見えないけど、植物の揺れる姿で感じることができるよな」

「え、うん」

わたしも釣られるように庭を見る。整った景色を揺らす、淡い風の通り道が、確かにそこに見えた。

「心だって見えないけど、贈り物を挟むことで見えるようになるかもしれないぜ」

安達としまむら『死間』P31より

確信をつくような日野の言葉には、はっとさせられますね。

こうして考えてみると、携帯を挟むことによって、安達からの連絡を待ってしまうしまむらの健気な気持ちや、安達への関心が見えるようになっているのかもしれないですね。

 

また、日野との別れ際の描写が実に読み応えがあります。

「友達だから別れるんだ。関係なかったらそんなことにも気づけない」

試し読みにもあった日野の言葉です。

寂しさを併せ持ちながらも、日野と友達で会ったという変えられない過去を大切に抱え込みながら、これからも共に歩んでいく安達との未来に心を躍らせるという対比が見事です。

これまでは少し浮かれつつ、そわそわと安達からの連絡を待っているしまむらの、相変わらずゆるゆるとした心情が語られてきましたが、ラスト、安達からの連絡が来てからのしまむらの感情の爆発が凄まじいです。

母親や日野との少し特別な非日常的やり取りよりも、いつも通りの安達の時間の方が高揚感が感じられていて、なんと微笑ましいことか…!

何年振りかの再会のごとく壮大に描かれる安達の登場シーンを、ぜひその目で確かめてみてください!

 

 

自宅の様子から伺える日野の生活や、苦労、意外な一面などを見る事ができ、本棚の本を永藤が勝手に並べ替えていた…などの永藤とのエピソードも語られているため、日野が好きな方は読んで損はないと思います!

 

 

アニメの続きは?

あだしまは1巻から4巻までがアニメ化されました。

よって、アニメの続きが知りたい方は、原作の5巻から読んでください!

5巻の見どころは、樽見の出番が増えたことにより、安達が今までよりもヤキモキして暴走してしまうところです。

そして、今までは何かと誤魔化したり、自分に言い訳を繰り返して葛藤してきた安達が、ようやく自身の本当に気持ちに向き合います。

安達の愛の重さが伝わってくる印象的なシーンもあるので、ぜひ読んでみてください!

 

 

夏休みの話なので、挿絵の爽やかな夏服も眩しくて魅力的です!

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