「透の本心は?」ホリミヤ10話 ネタバレ感想
ホリミヤ10話では、透、由紀、桜の三角関係に一区切りがつきました。
2人のことを雪や桜に例えた文学的なやりとりや、繊細な感情をカラフルに彩る様が見事で、人によっては苦く、そして甘い青春が詰まった話でした。
ですが、今回の話で野暮ですが少し気になった部分もあったかと思います。
由紀と透は付き合わないのか?
今回の記事では、ホリミヤの原作である『堀さんと宮村くん』のエピソードや作者コメントから、由紀や透の気持ちを紐解いていこうと思います。
アニメと堀宮との違い
アニメ10話の由紀と透の話は、漫画『ホリミヤ』とほとんど違いはありませんが、原作『堀さんと宮村くん』とは違う点がいくつかあります。
まず「堀宮」では由紀が学校に来て透が屋上に呼び出すシーンが透目線になっています。
親友の堀ですら気づかない由紀の偽りの笑顔に透だけが気づき、心配している様が伺える素敵なシーンです。
次に屋上のシーンですが、アニメ版では
てっきりこの人は優しいあの人の隣に行ってしまうのだと思っていた
という独白がありましたが、「堀宮」では
てっきりこの人がきれいに舞う桜の色に乱され魅了されてしまうのかと思っていた
という独白です。
また、アニメ版の由紀は真っすぐに透に向き合う桜と、はっきりさせない自分を比べ、そのうえで(透の一番傍にいたい)という我儘のような感情を持て余していることが分かります。
あの人が暖かな桜なら、私はきっと、積もって泥だらけの冷たい雪だ
そして、雪が降るのが楽しみだと言う透に対して、雪の悪い面や否定的な意見を口にします。
一方の「堀宮」では、そういった狡さや優しさ、桜と由紀の対比に焦点を当てているのではなく、もっと別の由紀自身が抱えている孤独や冷たさのようなものが肝になっている印象を受けます。
雪が一生とけなかったら
この人はさむがるね
こごえてしまうね
明日は雨だから寒くなると話していると、透は「大丈夫っしょ!まだ雪は降らないだろうし」と、アニメとは逆のことを言います。
私はこの人に
春のような
ぬくもりは与えられない
その後の「春になって、溶けるの待たなきゃね」からは違いはほとんどありませんが、手を繋ぐやりとりは「堀宮」にはありません。
また、堀宮の作者コメントでは由紀の心情について、このように語られています。
好きだけど付き合いたくないというか、彼氏彼女になる形はちょっと違うんじゃないかなっていう吉川の気持ちは石川は誰よりも分かるんです。
結局石川も堀に憧れていた面もあるので、いざ付き合うとなったら違うと思うんです。
好きだから付き合うっていうのは、ごく一部の人たちだと吉川は思っているんです。
それが河野(周り)と自分の決定的な違いだと思っていて、 石川に受け入れられないかもしれない自分が恐かったんです。
吉川は誰かに何かを与えることも求めることもためらってしまうんです。
それが大切な人であればあるほど、彼女は黙ってしまうんです。
出典:堀さん宮村くん 87話
由紀は桜の暖かさや優しやに対して引け目を感じているのもありますが、そもそも透がかつて好きだったのは堀であり、堀と自分を比べて自信をなくしてしまったいたのかもしれません。
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透の気持ちは?
「堀さんと宮村くん」では、仙石が透に由紀との関係について筆談で話すシーンがあります。
時系列で言うと、柳が由紀に告白して、由紀と透が偽の恋人になったすぐ後のことです。
「石川くんは吉川さんのことは…」
「だって吉川はともだちじゃん。嫌いじゃないけど…多分吉川も同じように思ってると思うし」
「そうじゃなくて石川くんは吉川さんのことは好きじゃないの?そうだと思ってたんだけど…(京ちゃんのことは抜きにして)」
「なんかそういう目で見ると吉川いやがりそう。いや、見ないけどさ…」
「でもはたから見てる限り吉川さんは石川くん以外とは絶対つきあわなそう」
透が由紀の複雑な気持ちを理解し、合わせていることが分かりますね。
しかしこの時点では、透が由紀に対して恋愛感情を抱いているのかは定かではありません。
この話は堀宮6巻に収録されています。
透の表情や、その後の由紀が堀やレミに質問責めされているシーンなども読み応えがあるので、ぜひ読んでみてください。
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由紀の恋愛観
ここからは閲覧注意です。
『堀さんと宮村くん』では、石川と吉川が好きな方にはあまりおすすめできないかもと前置きされた、2人の価値観について言及する話があります。
読まなくてもこれからの本編には影響がないそうですが、非常に印象的で、由紀の恋愛に対しての考え方にははっとさせられました。
それでは、話の内容について軽く紹介していきます。
「あのさぁ俺らって今付き合ってんの?」
透が唐突に由紀に聞きます。
自分たちは一人の人を悲しませてしまったのに、はっきりしないままなのは悪いと。
由紀は、質問には答えずに「付き合う」とは何かを問います。
「友達じゃあできないことをしても良い権利を与えられることだとでも思ってる?」
言葉に詰まる透に対し、由紀はぽつぽつと続けます。
「でもそれって…実は友達どうしでもできることだよね…しないだけで…」
そして、核心的な言葉を口にします。
勝手に決めつけるなと声を荒げる透に、由紀は顔を歪めながら、透がまだ堀を好きなこと、河野さんも気になっていることを指摘します。
由紀は、すがるように透の胸元に顔をうずめます。
「だって…俺さあ不真面目だし物事ハッキリ決められないし…」
透の言葉を聞き、由紀は「好きなものを好きじゃないという理由」について話し始めます。
「トオルは好きだよ
でもそこに愛はきっとない」
「……愛のない『好き』って何?」
「乾いてるって…こと」
自分が透に抱く感情をうまく説明できず、由紀は顔を覆ってしまいます。
追い詰めてしまったと手を伸ばす透を、由紀の声が遮りました。
「なんでさぁ、レイプされても子供ってできるんだろ…」
「愛がなくても子供ができるんだよ…?」
「おかしくない…?おかしいよ…おかしい」
愛の必要性を感じないと締めくくり、2人は帰路につきます。
寂し気な由紀の背中に、戸惑いながら透が決意を告白します。
「よ、吉川。全部やるから」
「全部で、なんていうかとにかく全部で吉川のことを好きになりたい」
ーーーー(略)ーーーー
「吉川も全部で俺のことを好きになって下さい」
由紀は、「…はい」とだけ返事をします。
ふわっとした少し不透明な話ですが、作者コメントを読むと、形がつかめてきます。
ユキ的には、付き合ってるからなんなのよ、彼氏彼女だからなんなのよ、 そんな名目なくてもやれることはやれるでしょ、好きじゃなくても子供はできるのよ、 付き合ってるってことに安心したり寄り掛かってんじゃないわよ、 付き合うってなんなのよ!!!という感じです。
石川的には、好きだから付き合うのは当たり前じゃん、 友達同士でキスしないだろ、付き合うからするんじゃんという感じです。
そしてユキ的には、愛なんてどこにもないのよ、信じた所で馬鹿なのよ、 愛なんてものがあったらこの世は幸せな人だらけなのよという感じです。
そして石川的には、好きな人がいればそこに愛はあるんじゃないかという感じです。
石川の意見短ぇ。
なので、ユキと石川は付き合っているのかと聞かれればノーですが、 もしこの世に「付き合う」「交際する」「彼氏」「彼女」という言葉がなければ、 二人は好き同士です。 堀と宮村も好き同士です。
由紀は、愛を信じることができないため、関係性に名前をつけて明確にすることに意味を見出せないのでしょう。
透のことが好きだからこそ、透が自分だけを好きではないことが分かってしまい、そんな半端な状態で、流れるように彼氏彼女の関係になることに抵抗があるのだと思います。
だからこそ、透が由紀だけを見ることによって、由紀の心にも変化があるのかもしれません。
長いので省略してしまったのですが、由紀が好きなものを好きと言えない理由は少し共感できました。
また、この会話の温度感や、繊細な表情の変化は、ぜひ自分の目で確かめてみてください。
この話は「ホリミヤ」にはないので要チェックです。