安達としまむら 特典小説『Chito』感想
互いに感情を渡し合う女子高生の2人の、ちょっと変わった日常を描くアニメ『安達としまむら』(通称あだしま)のBD&DVDが発売しました。
特典として、原作者である入間一間先生が書き下ろた小説がついてきます。
12月2日発売、BD&DVD第1巻初回封入特典の<入間人間先生書き下ろし小説『Chito』>の一部を試し読み公開します💡
— TVアニメ『安達としまむら』公式 (@adashima_staff) 2020年11月28日
アニメとはまた違う、会社員になった安達としまむらの日常をちょっぴり先にお楽しみください✨
特典小説は48Pと読み応えたっぷりですのでぜひゲットしてください🎁#安達としまむら pic.twitter.com/Tht4mLwKKz
今回は特典小説『Chito』の感想についてネタバレありで書いていきたいと思います。
あらすじ
今作は、2つのパートに分かれています。
中心となっているのは、しまむら目線で描かれる、会社員になった安達としまむらの日常です。
一緒に暮らしているようで、しまむらが安達の帰りを待ちながらご飯を作ったり、ヤシロがたかりに来たり、休日を2人でのんびりと過ごしたりと、ありふれた日々を、原作よりも高い糖度と近い距離間が彩っています。
一方で、最初と最後を飾るのはチト目線で描かれる、3700年後の別の星の話です。
自分以外の人を探すために旅を続けるチトに、ヤシロが付き添っています。
ヤシロは相変わらずご飯をたかり、退屈しのぎにとチトにせがまれて、しまむらの話をします。
見どころ
原作よりも先の時間軸の話なだけあって、2人の距離感の近さや、ちょっとしたやりとりが甘々です。
試し読みの時点でも、安達が難なく手をつないだり、しまむらの指を甘噛みしたりと、その糖度の高さがうかがえるかと思います。
そして、幸せの中にあるなんとも言えない寂寥感が、じわっと胸の中に広がっていくのが、あだしまらしいです。
それでは、具体的に、作中で印象的だった場面について語っていきたいと思います。
安達とこのマンションで暮らし始めて二年か三年。今のところ大きな問題もなく、大股で前進することもなく、ゆっくり歩いて行けていると思う。それは飽きることもなく、早々に答えに辿り着くこともない、程よい塩梅というものだった。
安達としまむら『Chito』P12より
2人での生活がうまくいっていることがうかがえます。
安達の帰りを待つしまむらは、一人でいる時の静謐さを嫌いじゃないと感じながら、それが消える前提だからだと考えます。
安達と過ごす日々が当たり前になっているしまむらを見ると、なんだか感慨深いですね…。
じゃあそんな安達は何に興味があるのかというと。
「…照れるぜ」
昔も今も、そこだけは変わらない答えがあるのだった。
安達としまむら『Chito』P14より
今日の献立を考えながら、しまむらは安達のことを思い浮かべます。
1人で照れてるしまむらが可愛いですが、何よりも安達から向けられている好意をしっかりと理解した上で受け止めているのが胸にグッときますね…。
「し、しまむらの顔を見たら疲れが吹っ飛んだ……みたいな」
咄嗟の思いつきを言葉にしようとした安達が、中途半端に照れる。
そんな恥じ入る安達を見ていると、なるほど、こちらの疲れも少し忘れそうになる。
安達としまむら『Chito』P23より
しまむら目線であるが故、安達への好意がダイレクトに伝わってくるのが堪りませんね~~~!
安達の様子はアニメの時系列とあまり変わっていない感じですが、変わらずにしまむらを大好きなところが可愛いです!
この後の数ページにわたる2人のじゃれ合いも見ていて自然と笑顔がこぼれるほどかわいいので必見です!
どこまで行けるだろう、わたしたちは。
そんなことを何度か考えた、安達との日々。
確か、一緒に暮らそうって誘われた時も考えて、その時のわたしは、こう決めた。
安達としまむら『Chito』P33より
疲れがたまってぼーっとしている安達を膝枕で寝かせながら、昔を振り返り、そして将来について考える、印象的はシーンです。
2人で旅行に行く計画を立てたり、しまむらが自分のことを「安達の指先から繋がる半身のようなもの」だと認識したりと、読み応えのあるシーンです。
ゆったりとした2人の会話の温度に、じんわりと心が温まります…。
しまむらが、安達と暮らすことを決意した漠然とした理由について語る独白は、実にしまむららしくて、思わず微笑んでしまいました。
是非その目で確かめてください!
「多分、一緒には暮らさないかな。別れが辛いし。」
昔ならごまかしていたその本音を、安達に漏らす。
「どんな出会いも必ず別れて終わるようになってるの、意地が悪いよね」
安達としまむら『Chito』P36より
犬を飼いたいかどうかの話をしているシーンです。
しまむらの人間関係に対して、達観したような、どこか諦めたような態度をとっている理由が垣間見えるようですね。
隠さずに本音を曝け出すしまむらの姿に感動を覚えます…。
それだけ安達には心を許して、信頼しているという事なんでしょう。
この言葉を受けて、すかさず安達が言った言葉が真っすぐで、読んでいて涙が出そうでした。
すぐに真っ赤になる安達の一連の様子がとても可愛いのですが、その姿に様式美を感じるしまむらもかわいいです!
安達が、見つめたままじっとしている。待つように。その目を見つめ返しながら。
「好きだよ」
待ちわびる安達に、ご注文の品をお届けする。
安達としまむら『Chito』P37より
まさかの告白です!!
しまむらからの好きが聞けるなんて思っていなかったので、心臓が止まるかと思いました…。
これで満足しない安達との言葉のやり取りも破壊力満点で正直やばいです!!
2人のことが好きなら絶対損はしないので読んでみてください!
安達のことをかわいいと思っているしまむらがかわいいです!
ヤシロは気が楽なのだ。あいつは、わたしより早く死ぬことなんで絶対にないだろうという根拠のない確信があった。そういう相手が一人でもいると、気持ちが楽になる。
これから時の果てに流れ流れ流されて、石が川の流れに磨かれて丸くなるようにたくさんのものを失ったとしても、独りぼっりじゃないかもしれないって思えるから。
安達としまむら『Chito』P39より
突然切り込んでいく寂寥感のあるモノローグです。
安達との未来を考えているからこそ、ヤシロに対してこんな想いを抱くのでしょうか…?
メタ的な視点ですが、この作品にヤシロがいる意味が分かる気がしますね。
しまむらのモノローグでは、何かを残さなければならないという強迫観念みたいなものを抱いていて、安達と出会った意味を残したいと思っていることが語られます。
それが、2人で生きていくことの意義なのかもしれません。
「安達が好きそうなもの」
安達が好きだと思えるものを増やしていく。
頭にしまむらの、とつくものを、もっとたくさん。
そういうのを考えていこう、これからのわたしは。
安達としまむら『Chito』P41より
献立を考えながらヤシロと話す場面です。
安達から受け取るだけでなく、しまむらも、安達のためにできることをしようとする…。その温かい心に、こっちまで温かくなりますね。
しまむら以外には特にこだわりのない安達、それはそれでいいと受け入れたうえで安達の好きなものを増やしていこうと考えるのは、紛れもなく「愛」ですね~~!
しまむらがつくったチャーハン…など、しまむらが安達が好きなもの、興味があるものは「しまむら」だけで、それでも、しまむらを通して少しずつ好きなものが増えていったら嬉しいですね。
『Chito』では、ヤシロとしまむらのやり取りが10ページほどにわたって描かれるのですが、親子のようで大変微笑ましいです。
夕飯をたかるだけでなく、お手伝いをしたり、安達が帰ってくるまで待っていたりと、ヤシロの成長が感じられます。
安達とも仲良くなっていて、三人でいると、まるで疑似家族のようです。
また、余談ですが、所々で、ヤシロとしまむらの妹の関係性も示唆されているので、気になる方はぜひ自分の目で確かめてみてください!
まとめ
手を繋いで歩く、膝枕をする、後ろから抱きしめる形で座る、「元気ですかー」…といったアニメでもやった変わらないやり取りをしていながらも、反応が温度感が異なり、時間の流れを感じさせます。
終始甘々なムードですが、ふと寂しさに襲われるような鋭い独白があったり、3700年後というミステリアスな話が挟まれたりと、スパイスが効いた仕上がりになっています。
チトとヤシロ
まだ謎の多い3700年後の話ですが、荒廃した世界の寂しさと、対照的に明るいヤシロの独特の雰囲気が癖になります。</><u/p>
チトはしまむらに似ているらしく、確かに言葉や考え方に、しまむららしさを感じます。
いずれ、安達のような存在も現れるのかもしれません。
今後の展開
あだしまの特典小説は全4巻で、『Chito』『死間』『ムラ』『Abiding Diverge Alien』です。
これは、アナグラムになっていて、
Abiding Diverge Alien→ADA→あだ
Chito→ちと
死間→しま
ムラ→むら
並べ替えると『安達としまむら』になります。
今後の展開ですが、しまむらとヤシロがある約束をしたようなので、その内容について、明かされていくのでしょう。
しまむらの、何かを残したいという思い、チトの、自分以外の誰かに会いたいという願いなどが、軸になっていくのかもしれません。
物語のラストでは、チトが、安達に似た存在に出会うとしたら、ロマンティックですね。
↓特典なしと記載されていますが、Amazon限定版との区別のためなので、特典小説はつきます。